水石入門 探石の勧め

探石の進め (08年2月11日)

なぜ探石を勧めるか。
私が水石を販売する側で”探石を勧めるのは何故”と思われる方がおられると思いますが、最近の水石界において加工石がまったく自然のものとして扱われ、自然の良きものが理解されなくなってきている今日、自然が造ったものの良さをもう一度見つめなおしていただこうということと、真贋の目利きになって欲しいということの二つがあります。


 私がこの商売の道に入った頃、多くの水石は岐阜で切断されたり、形を整えるために、多少欠いたりしていました。業者も多くだんだん趣味の人が増えるに従い、京都や静岡に広がっていきました。当時から岐阜には名工といわれる工人がいてその仲介役をしたのが盆栽業者でした。(書物のなかでは岐阜の坂井貞亮さんの書き残した揖斐川石の思い出、1〜4に明治20年頃からの揖斐川石の探石と加工など詳しく書かれています)。


その当時の愛石家の人たちは書画、骨董、盆栽など多くのものを手掛け、最後に人の手が入らぬ水石の鑑賞に入ったため最初は切断加工の物でしたが、いち早く自然の良さを受け取られ、味のあるものに行き着くのに時間がかからない人が多かったと思います。また研究熱心で各地の河川にも出掛けていました。


 脱サラで水石店を開いた私はそうした人たちに、水盤や鉢を裏返して落款を見て判断するようでは未熟過ぎると、押入れに並んだものから見て判断できるように教えられました。今、充分ではないが良し悪しの判断が自分なりに身に付いたと思います。
絵画や美術品の勉強もさせてもらいました。中には横山大観の「八紘一宇」という富士に桜の絵で戦時中総司令部に飾られていたもの(今ある美術館入りしている)を賛だけ切り落としたものなどを手に取りながら説明していただいたものです。


その方達の愛玩していたものと、現在この趣味界に入ってこられる人の間に、うぶな物と言いながら造られたものと、それをうぶ石としてもたれている人が多いのが果たして良いことか疑問に思われてなりません。それ故、河川の石の現状と水石を熟知する基本を探石で知って欲しいと思います。


ちなみに、瀬田川梨地石、梨地自体は多く河川にありますが、摺れた曲線と傷のない梨地肌は他の河川ではいまだにお目にかかりません。加工を知るには一番参考になると思います。

探石ガイドなどは、雑誌「樹石」や「愛石」等に掲載されていて今更の感ですが、河川法などの知識や現地の状態などを知るためにも、同好の人たちや現地の趣味家に案内を請うなど事前の努力も必要かと思います。

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